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誓い 後編

音子です。
こちらは戦国さこみつ「誓い」の続きです。
注意書きは前編で読まれていますね??

長文でもどんと来い!という方は<続きを読む>からお入りください。




立ち尽くす三成をよそに、左近は女達と楽しげに会話する。
床にまつわるきわどい話も飛び出しながら、座敷は三成が来る前の空気を
取り戻していた。

先から沈黙したままの三成をチラリと見遣れば、キッと鋭い視線が返される。
その顔に浮かぶのは、落胆というよりも苛立ちや悔しさだった。

強情だねえ。
唇を噛み侮辱に耐える姿は、なぜかそそるものがあって-
左近は己の意趣返しにすっかり満足してしまった。

気がつけばこの状況を楽しんでいる己。
仕官するしない抜きでからかってやりたい
そんな誘惑をこらえ、左近は三成の訴えるような視線をあえて無視する。
手元にあった酒を飲みほせば、俺は諦めぬぞ、という呟きが聞こえた。

「俺には、お前の力が必要なのだ」
今度は女達にもはっきりと届く声だった。
悔しさを押し隠し、つとめて冷静であろうとする姿は、いじらしささえ感じさせる。
だが左近は口撃をやめない。

「あんたに俺が御せるんですかね」
「それは」
「今でさえこのザマだ。これじゃあどちらが主でどちらが従か、
 分かったもんじゃありませんな」
「・・・くっ」

-あなたに俺の主は務まらない
左近の意図するところを、三成は素早く正確に拾い上げる。
聡いがゆえに、この先の展開も読めてしまうのだろう。
ぐう音も出ない三成を見て、ここいらが潮時かもしれないと左近は思った。

左近は十以上の歳の開きがある己を三成が操るなど、はなから出来ぬことだと
分かっている。
無理難題をふっかけているのは左近の方であって、出来ぬことは恥ではない。
目の前の男がどんな反応を見せるのか-左近はただそれを確かめたかった。

三成はこれだけ追い詰められても、縋る気色を見せなようとはしない。
事態を打開する策を、必死で考えているのだろう。
あくまで気丈に振舞おうとするその様は、見ようによっては依古地とも取れたが。
媚びやへつらい無しに己と向き合おうとしている三成の誇り高さに、左近は好感を持った。

なかなか気骨があるじゃないですか-
負けず嫌いな性格は、嫌いではない。

この男に仕えてみるのも、面白いかもしれない。
左近はそう思えるようになっていた。


左近は三成に問い掛ける。
「もしも、の話ですよ。俺が家臣になったとして・・三成さん。あんたはその先に
 何を求めるんです?」

軟化した態度に、三成は風向きが変わったことを敏感に察知する。
だがその助け舟に易々と乗り込むことは、自尊心が許さないのらしい。
一瞬ムッとした表情を見せたことに、左近は内心苦笑した。
きかん気の子どものようだが、さすがは治部少輔たる男。
その受け答えは毅然としていた。 

「今の俺があるのは、主のおかげだ。その主が天下を望んでいる。
秀吉様のため、より一層の奉公にはげむ。それだけだ」

三成は嘘をつく男ではない-それは先からのやり取りと、揺るぎない瞳から
おのずと分かる。
だが、左近はいささか意外な気がした。
不遜な態度で平懐者と称される男にしては、やけに殊勝で純情ではないか。

己が捕まえた噂の中には、三成が秀吉の寵を笠に着て力を振るう悪漢だの、
秀吉をたぶらかす狐だのと声高に罵るものもあった。
そんな下地があるからこそ、三成の答えは理想的すぎて逆にきな臭くも写る。
真相はどうなのか。
左近は問いを重ねることにした。

「本当にそれだけなんですか」
「どういう意味だ」
三成は解せぬ、と言いたげな顔をする。
「名誉や権力、秀吉公の歓心。あるいは・・・天下。そちらは欲しくないんですか?」
俺と女の他には誰もいやしない。
腹を割って話してくださいよ-

密談とは思えぬほどの軽薄さ-ただしそれは相手の失言を誘う狡猾さも秘めている-で
そう切り出した左近に、三成は激昂した。
「俺を愚弄するか!そんなものは要らぬっ!!」

バッサリと切り捨てるような口ぶりだった。
今まで答えに窮していたのが嘘のような振る舞い。
髪を逆立てんばかりの迫力に、左近は三成の逆鱗に触れたのだと悟る。

不正を憎み、私利私欲を一切否定する答えに、左近は目をすがめた。

高慢な態度にばかり気を取られていたが、この男はひどく純粋だ。
潔癖さは色事だけでなく、その生き方にまで貫かれているらしい。
今日までこの男を見誤っていたのかもしれないな-
野心と呼ぶには清廉に過ぎる言動に、左近は惹かれるものを感じた。


酒をたたえた杯の中で、ゆらめく三成の姿。
その底を、知りたい。
好奇心よりももっと切実な何かに突き動かされ、左近は酒をあおった。


「失礼を。このご時世だ、腹に野心を隠している輩が多いもんでね」
「有り得ぬ。まさか、お前も同じ穴の狢だというのか」
そう詰問する三成に、左近はピシャリと言い放った。
「それはありません。お答え次第では、即仕官を断るつもりでした」
「カマをかけたのか」
「お察しの通り」

「断らぬということは・・俺に仕官してもよい、ということか」
そこまでは言ってないでしょう
左近が手に入るかもしれないと、三成はずいぶん気が急いているようだ。

「まあお待ちなさい。もう一度聞くが、二万石では家来と主と同じ禄になる。
そんな高禄で俺の戦の腕を買おうってのかい」
聡いあんたのことだ。戦に勝つだけなら、他にもやりようがあるでしょう-
そう左近は尋ねた。

二万石があれば、数百の兵を揃えることも出来る。あるいは有能な将や軍師を手広く
迎え入れることも可能だろう。
二万石の対価が軍師ひとりというのは、三成の禄からすれば明らかに割に合わない。
(元を正せば、左近自身がふっかけた話なのだが)
いくら軍略に秀でた左近とはいえ、何百という兵に囲まれれば勝てる訳もないのだ。

なぜ、こうも俺に執着するのか?
駆け引きでも何でもない、それは左近の純粋な疑問だった。


問いを発した左近の前へ来た三成は、身を屈めぐっと顔を寄せた。
息遣いが聞こえる程の至近距離。
不審に思う左近をよそに、三成はその目を真っ直ぐに見据えて言い放った。

「俺が買いたいのは、不義に怒り、高禄を蹴った志だ」

ごまかしを許さない真剣な声。
迷いが無く、どこまでも澄んだ眼差し。
山崎で見たものと同じ光を、その瞳は放っていた。。

濁りが無く、それでいて確固とした意志を伺わせる瞳は水晶のようだ。
荒削りではあるが、それは紛れも無く本物の原石。

未だ穢れぬのではない。意志の力で穢れさせぬのだと感じて左近は唸った。
世間知らずの若者と切り捨てた筈の男が、貴さを帯びているように見える。
不正や妥協を許さず、己が信じた道をゆく高潔さ‐それはどこまでも美しかった。

眩しいほど白い雪を見るような思いで、左近は三成を見つめる。

俺は世を渡るため、ずいぶんと泥にまみれちまったが-
己を支える魂だけは、誰にも汚させなかったつもりだ。

その魂が訴えている。
俺とこの男は、同じものを見ている
同じ志を持っている、と。


「同禄でも構わぬ・・・・俺が欲しいのは、同志なのだからな」

己の思考を読み取るかのような言葉に、左近は刮目する。


「俺が買いたいのは、お前の志だ」そう告げた瞳に、左近は魂をわしずかみにされた。
同志という言葉を聞けば、このお方の清らかな心を守りたい-そんな使命感が湧いた。
冗談半分であしらうつもりが、すっかり本気にさせられている。

胸と腹の間に、熱い塊が宿ったような感覚-
どこか懐かしいそれは順慶に仕えていた時と同じもの。

そう気づいた瞬間、左近は三成の背に向かって叫んでいた。

「ちょっと待った!」


結局あんな若造に、気圧されちまった。
鬼の左近も形無しといったところだが、今はそれさえ誇らしい。
-参りましたよ、三成さん

ようやく見つけた、あるじ。
振り向いた三成に、左近はゆっくりと平伏する。

「殿、と呼ばせていただきましょう」


こうして二人は主従になった。



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音子(ネコ)

Author:音子(ネコ)
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